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コリログ

青コリが書く雑文。ブラゲからガジェットまで

ドラマで知る心理学「家族ゲーム」は家族療法を知った上でみると色々面白い

医療 医療-心理学

今月から始まった家族ゲームという嵐の櫻井翔主演のドラマがあるんですがこれがわりとダークかつコミカルで面白いです。原作は1981年の第5回すばる文学賞を受賞した本間洋平の小説で、長渕剛主演で何度が映像化されています。

 

内容は、風変わりで型破りな家庭教師・吉本荒野が、高校受験を控えた落ちこぼれの中学生を教育しながら、多くの問題を抱えた家族にも影響を与えていく騒動を描いたものなんですが、そもそも何故タイトルが家族ゲームなのかと疑問を持ちながら見ていました。すると一緒のドラマを見ていた臨床心理士の友人があれは家族療法だよとなんか聞いている方が意味が分からない言葉を発してきたので、それについて友人の解説を少し肉付けして説明してみます。

 

家族療法とは?

 

問題を個人ではなく家族というユニットで見て、問題解決を試みていくアプローチのことです。

 

ドラマの家族ゲームの中では落ちこぼれでいじめにあって不登校になっている中学生の次男沼田茂之(以下 茂之君)が登場します。

その時いじめを受けている茂之君を見る見方が3種類存在します。

  1.  いじめられている茂之が悪いという視点
    家族が、「いじめられている茂之君だけが悪いのであって、他の家族に責任はない。」と考えている。この場合、家族は、茂之がいじめられてるという事実だけに注目し、「茂之がいじめられていることだけがわが家の問題だ。」ととらえるという見方です。
  2. もしかすると、自分のせいで茂之がいじめられているのでは?という視点
    家族は、「もしかすると、茂之がいじめられているのは、私に原因があるのではないか?」と考えている場合です。家族は、茂之に、ある程度共感的に対応していて、甘やかして育ててきたからではないか?仕事に熱心な余り、家庭を顧みなかったことが原因ではないか?などと考える見方です。
  3. 茂之がいじめられているのは、家族のありかたに問題があるのでは?という視点
    家族が、「茂之が病気なら、家族である自分たちも病んでいるのだ。茂之がいじめられる原因は、茂之も私たちも含めた家族全体の中にあるのではないか?」
    と考える見方です。

家族療法はこの3種類の見方のうち3番目の見方のことを言います。

ちなみに家族療法ではそこで、問題を抱えた家族成員を、従来のクライエントという呼び方ではなく、家族を代表して問題を表現している人という意味で、IP(Identified Patient;患者と見なされた人)と呼びます。つまり、今回のドラマ家族ゲーム内のIPは茂之君ということになります。

 

家族療法の用語

  1. システム
    システムには、三つの性質がある。1)変換性、2)全体性、3)自己制御性です。変換性とは、外的な条件に合わせて自分を変化させていく能力です。全体性とは、部分だけを見てもわからないという事です。自己制御性とは、最も重要な概念で、システムに何らかの力が加わったとき、それを解決しよう、システムを復元しようとして自分なりに何とかしようとする能力です。ドラマでは沼田一家はこれが全てぼろぼろで家族ぎりぎりのラインになっています。
  2. 治療抵抗
    治療抵抗とは、介入課題を果たさなかったり、治療者をなじったりする行為を指す。クライアントは、解決を求めて治療にやってくるにもかかわらず、治療のための変化に抵抗を示すわけです。家族が櫻井翔を疎ましく思い排除しようとするところはまさにそれです。
  3. 二重拘束
    二重拘束は、①一次的ネガティヴ命令②より抽象的なレベルでそれとは相容れない二次的ネガティヴ命令③被害者が二重拘束の場から逃れることを禁止する三次的命令から構成されます。このドラマでも櫻井翔が茂之君に「茂之君が1週間学校に行けば僕はやめます。(一次的ネガティブ命令)」「しかし、1日でも休めば僕の言うことを茂之君には何でも聞いて貰います。(二次的ネガティブ命令)という約束をし、いじめられて学校に行かないと言うと「何でも言うことを聞くといった以上学校に行け(逃走を禁止する三次的命令)」と言います。茂之君が窮地に陥る状況で二重拘束を説明することが出来ます。結果的にはドラマでは上手くいきますが、カルト教団が精神崩壊に使う手こともあるので注意が必要です。

  4.  偽解決
    システムが問題を解決しようとして取った行動が、逆に、問題を定常化させ、長期化させる原因になっている場合があります。このような、悪循環を形成する解決を偽解決と呼びます。
    この場合、
    「茂之がいじめられる → 学校を休む → さらにいじめられる→ 登校拒否」という具合にどこまで行っても、問題と偽解決の円環から逃れることが出来ません。
  5. 小さな変化
    システムの悪循環を断ちきるために必要なのは、問題に上手く適合した小さな変化を創造することです。茂之君がいじめを克服し不登校から脱却することが小さな変化に該当します。

  6. ワンダウン・ポジション
    治療者が、クライアントよりも、一段下位の立場をとることです。治療抵抗を撃退し、パラドキシカル・アプローチを成功させるために不可欠の技法です。櫻井翔は一応家庭教師としてワンダウンポジションをとっていますのでここも該当します。
  7. リフレイミング
    意味づけの転換をリフレイミングと言います。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、2話の終わりに櫻井翔がした行動はリフレイミングです。

読んでみて今ひとつ理解できない方も多いと思います。

このドラマのポイントは、家族療法の観点から見ると

  • 沼田家のIPは次男で、彼は家族がそれぞれ持つ問題点を代表して表現している。
  • 櫻井翔の介入の仕方は一見破天荒だが、臨床心理学的治療テクニックがいくつかある。

フジテレビがこんなこと考えて物語を作っているとは考えにくいですが、こんな感じで、この行動はこのアプローチだと邪推しながら見て頂くと面白いかも知れません。

 

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